仕事のメールで学ぶ聖書の読み方 第2回:リテイク「一応確認です」

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第2回:リテイク「一応確認です」

――「自分の後ろめたさ」を神様に投影していませんか?

1. 【メールの現場】:受信箱に映る「自分の顔」

仕事をしていると、たまにこんなメールが届くことがあります。

「一応確認ですが、進捗いかがでしょうか?」

これ、送り手はただ「今の状況を知りたいだけ」で、深い意味なんてないことがほとんどです。 でも、もしあなたが締め切りを1日破っていたり、心の中で「あの仕事、後回しにしすぎたな……」と後ろめたさを感じていたりすると、この文字が全く違う響きを持って襲いかかってきます。

「うわ、出た。一応確認とか言いながら、これ絶対『お前、何サボっとんねん』ってキレてるやん。丁寧な言葉使いが逆に怖いわ……」

言葉は一字一句同じなのに、自分の「後ろめたさ」が、勝手にメッセージに毒を盛り、攻撃的な色をつけてしまう。これをビジネスでは「被害妄想」と言いますが、聖書を読むときにも、私たちはこれと全く同じことをやっています。

2. 【釈義のメス】:私たちは「自分のコンディション」を読んでいる

釈義の世界では、読む側が最初から持っている知識や感情を「前理解(ぜんりかい)」と呼びます。

私たちは、透明なレンズでテキストを見ているつもりですが、実はそのレンズには、自分の「不安」や「プライド」や「罪悪感」という色がベッタリ塗られています。 メールの「一応確認です」が攻撃に見えるのは、相手が怒っているからではなく、あなたが自分自身を責めているからです。

自分の心の中にある「自分を責める声」を、相手(送り手)の声としてすり替えて受け取ってしまう。これを心理学では「投影」と言いますが、神様に対しても、私たちはこの投影を頻繁に行っています。

3. 【聖書のケーススタディ】:優しさすら「詰め」に聞こえる罪悪感

では、この「投影」が聖書の読み方をどう歪めるか、復活したイエスが弟子ペトロに再会したシーンを見てみましょう。 ペトロは、イエスが捕まったとき「あんな人は知らない」と三度も嘘をついて逃げ出した、という特大の後ろめたさを抱えていました。

そんな彼に、復活したイエスはこう問いかけます。 「ヨハネの子シモン、わたしを愛しているか。」(ヨハネによる福音書21章15節)

  • 「後ろめたさ」というレンズによる誤読: このときペトロは、イエスに三度同じことを聞かれて「悲しくなった」と記されています。彼の脳内では、こんな風に再生されていたのかもしれません。
    「一応確認やけど、あんた、まだ私のこと愛してるなんて言えるん? あんなに派手に裏切っといて、ようそんな顔して私の前にいられるなあ」
    ペトロにとって、イエスの「愛しているか」という問いかけは、自分の裏切りを蒸し返される「詰問メール」のように聞こえたはずです。
  • テキストが本来語っていること: しかし、テキストをよく読むと、イエスは彼を責めるために現れたのではないことがわかります。イエスは、三度「知らない」と言ったペトロに、あえて三度「愛しています」と言い直すチャンスを与えることで、彼の傷ついた自尊心を回復させようとしていたのです。
    イエスの言葉は、最高の「フォローアップ・メール」でした。でも、ペトロ自身の罪悪感というフィルターが、その愛の言葉を「皮肉な確認」に変えてしまった。私たちは自分のコンディション次第で、神様の最大の優しさすら「攻撃」と誤読してしまうことがあるんです。

4. 【鏡としての問い】:神様を「怒っている上司」に仕立て上げていないか

あなたは聖書を読みながら、どこかで神様の顔色をうかがっていませんか?

「私、今日はお祈りサボったから、神様もきっと『一応確認やけど、やる気ある?』って冷たい目で見てるんやろな……」

もしそう感じるとしたら、それは神様が冷たいのではなく、あなたが自分自身を許せていないだけかもしれません。 「失敗したら終わりだ」「役に立たなければ居場所がない」というビジネス界の呪縛を、そのまま神様との関係に持ち込んでしまうとき、聖書は「回復への招待状」ではなく、「自分を追い詰めるための督促状」に変わってしまいます。

それはもはや神様の言葉を読んでいるのではなく、自分の「後ろめたさ」を反芻しているだけです。

今日の振り返り: あなたが「神様は自分を責めている」と感じるその瞬間。 本当に責めているのは神様ですか? それとも、あなた自身の心の中にいる「許せない自分」ですか? 一度その重たいレンズを置いて、テキストが差し出している「やり直しのチャンス」を見つめてみてください。

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この記事を書いた人

カトリック教会司祭。
愛媛県松山市出身

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